ロープの衝撃荷重の算出法

前回前々回の検討で使用した最大ロープ荷重(衝撃荷重)Fの算出法を書いておきます。

ロープは使用範囲内で近似的に弾性体として扱うことができるので、その荷重はフックの式を用いて
F=kx (N):式1
kはロープのバネ定数(N/m)、xはロープの伸び量(m)
ここでxに墜落が停止した瞬間のロープの伸び量(m)を入れればFはロープの最大荷重を表すことになる。

ところが、バネ定数kは同じロープであっても長さが変わるとそれに反比例して変化してしまう(高校で習ったバネの直列問題を思い出してください。)。従ってこれを使って固定制動時の落下停止を表現する一般式を作る事ができない。(もちろん形の上では式は書けるが、利用上の意味を持たない。)

そこでフックの式を次のように変形する。
F=kx
=kx×(L/L)
=(kL)×(x/L):式2
(単にフックの式の右辺にLを掛けてLで割っただけ。LでもOでもVでもEでも何でもよい。)

ここでLをロープの長さ*1(m)と定義すると、kLはロープの長さに依らない固有の弾性力*2(N)を表すことになる。そこでkL=Kと書くことにする。またx/Lはロープの伸び率(100分率:無次元)表すことになる。いずれも一見Lの関数に見えるが、Lに依らないロープの物性値とでも呼べるものである。(kやxがLの関数であるため相殺される。)

*1:落下前に固定確保点と落下開始地点の間に存在していたたるみを含むロープの長さ
*2:断面積を考慮しないヤング率のようなものと理解すればよい。
長さL1、バネ定数k1のロープにおいてK1=L1・k1
同じ材質のロープの長さが倍になると長さはL2=2×L1、バネ定数はk2=k1/2となるから
K2=L2・k2
=2L1・k1/2
=L1・k1
=K1
つまりK1=K2となり、Kは長さに依らないロープ固有の値であることが理解できる。

K=kLおよびk=K/Lを使うと式2は次のように書き換えられる。(単に記号を書き換えただけ)
F=K×(x/L) (N) 式3
Kは前に述べたようにロープの物性値、Lは最大荷重を求める際の前提条件。従って墜落速度がゼロになった瞬間のロープの伸び量xが分かればFを求めることができる。

墜落者が落下で放出する位置エネルギーEpは
Ep=Mg(h+x) (Nm):式4
Mは落下者の質量(kg)、gは重力加速度(m/s^2)、hは自由落下距離(m)、xは墜落速度がゼロになった瞬間のロープの伸び量(m)

墜落者がロープに引っ張られて落下が止まった時にロープに蓄えられる弾性エネルギーErmaxはフックの式を変位xで積分すれば求まるから
Ermax=0.5kx^2  (Nm):式5
上で述べたようにk=K/Lを用いて式5を書き換えると
Ermax=0.5(K/L)x^2  (Nm):式6

ビレイループとロープの結束部や支点での摩擦を考えずに、ロープが伸びきって墜落が止まった瞬間に墜落の位置エネルギーがすべてロープの弾性エネルギーに変化したと考えると
Ep=Ermax
つまり、
Mg(h+x)= 0.5(K/L)x^2 (Nm):式7

これをxについて解くと、
x=L×(Mg/K)×(1+(1+(2K/(Mg))×(h/L)))^0.5 (m):式8

式8を式3に代入して整理するとロープの最大荷重Fが求まる。
F=Mg×(1+(1+(2K/(Mg))×(h/L)))^0.5 (N):式9

ここでh/Lはロープ長さと自由落下距離の比であり一般に落下係数と呼ばれる。式9からロープの最大荷重は落下物の重量Mg(N)、ロープの弾性力(N)、および落下係数(無次元)で決定されることがわかる。つまり登る人とロープが決まれば、墜落時にロープにかかる最大荷重は墜落距離Lではなく、落下係数に支配されることがわかる。(30cm登って60cm落ちた場合と、5m登って10m落ちた場合のロープの最大荷重は等しいということ。ここで注意しなければならないのは人体に加わる衝撃エネルギーEttlはロープに加わる荷重F(t)を時間積分した∫F(t)dtである。これは落下時間が長い後者の方が当然大きい。)

またロープのスペックにはUIAAの実験(M=80,h/L=4.6/2.6=1.77)で得られたFが記載されているので、これを使ってロープの弾性力Kを式9から逆算することができる。

式9をKについて解くと
K=(L/h)×Mg/2×((F/(Mg)-1)^2-1) 式10
これに例えばUIAAの実験条件L=2.6m、h=4.6m、M=80kgとテストから得られたFを(kNでなくNに直して)代入すればKが求まる。

蛇足
Mは質量kgですが、数値自体は体重計で測る重量kgwと同じです。従って体重80kgwの人で計算する場合はMに80kgを代入して下さい。算出される最大荷重Fの単位はNです。kgfに直す場合は9.8で割ってください。
関連記事

コメント

非公開コメント

初めてコメントします。B会のおすぎです。
すごーく細かいことで恐縮なんですが、
式9の^0.5の右にカッコが一つ足りないような・・。
Kは要するにヤング率×断面積のことですね。

おすぎさん、

いつも本当にお世話になります。いろいろ頭が下がる想いです。

式を追って頂いたんですね。そういう方が居て下さると書いた甲斐が有ったというものです。その通り)が一つ抜けていたので訂正しました。

Kはバネ定数×長さなのでヤング率×断面積と同義だと理解していますが、それが長さに依らないロープの固有の弾性を表す指標であるということが式では示せていても、直感的にイマイチしっくりきてません。何かいい説明方法はないでしょうかねぇ?

これからもよろしくお願いいたします。

すみません。
ムズカシ過ぎて授業についていけません。e-263
今度お会いした時、試験に出る基本のトコ?だけ、そっと教えてくださいね。

代わりに

監督さん、

ピカピカ星のムーブ教えてくれたらね!